紀行

2023年夏に向けて 〜 八王子芸妓衆と野口染物店の夏きもの Vol.2

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<2022年11月10日更新>


2023年夏に向けて 〜 八王子芸妓衆と野口染物店の夏きものVol.1から続く・・・


日本橋「竺仙」の染物を手掛ける八王子「野口染物店」。

同じく八王子「八王子芸妓衆」。

そして我々「荒井呉服店」が2023年夏に向けて取り組んでいる伝統染色技法「長板中形」で染める夏きものの制作。


生地の表裏。ぴたりと柄を合わせる事で、藍と白のコントラストがいっそう明快に美しく映える「長板中形」。

前回の工房訪問に続き、今回は制作工程の一つ「糊付 - 型置き」の見学に伺った。

<今回の型付 - 糊置きで使用する型紙。作業に入る前に丁寧に水洗いをして使用する>


<経験を頼りに調合される防染糊>


<型紙の端に盛られた防染糊>


<使用されるヘラは型紙に彫られた柄に合わせ自ら制作したもの。工房には様々なヘラが並ぶ>


<長板に貼り付けられた白生地について、野口氏に話を伺う芸妓衆>


<丁寧かつ素早い手捌き。作業中も防染糊の乾燥は進む為、スピードも要される>


<作業に見入る芸妓衆と店主>


<緻密な型紙の通りに置かれた防染糊。白い部分が藍に染まる>


<長板片面(6.5m)の型付 - 糊置きが完了>


<防染糊を乾かす為に長板ごと天日干し>




「型付 - 糊置き」という工程では、樅木で作られた長さ約6.5mの板(長板)に白生地を貼り付け、その上に型紙を置き、ヘラを使って防染糊を付着させる。

渋紙を重ね作られた型紙を置く際に、柄の継ぎ目にズレや隙間が生じない様に、また白生地の表裏の柄がぴたりと合うように型紙を置くが、ここに熟練の技と経験が要される。


防染糊は”糠”と"もち粉"を独自に調合したものに加え、表裏の柄を合わせ易いよう赤い染料を含ませる。この防染糊は型紙に彫られた柄の特徴に合わせて調合を変えている。


「型付 - 糊置き」が完了したら防染糊を乾燥させる為に板ごと天日干しに。天候に左右されながら、制作工程は丁寧に進められる。




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江戸時代後期、化政文化が最盛期の頃に創業した「野口染物店」。

明治時代、桑都八王子の染織産業の発展と共に栄えた花街を源流とする「八王子芸妓」。

そして2023年に創業111年を迎えた我々「荒井呉服店」。


同じ街で和装や伝統文化に携わるもの同士、ふとした思いつきとちょっとした遊び心で、2023年の夏が楽しさで彩られる様に、今から少しづつ準備を始めている。



Vol.3に続く・・・



photo&text Ryusuke Ishige



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